みやぎ県子ども・おやこ劇場 随想

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第34回 芝居『一二人の怒れる男』

戸石みつる(演劇家)

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「法廷もの」の代名詞と云われる密室劇の傑作で、12人の陪審員がスラム街で起こった殺人事件の評決を出すまでの2時間超の物語です。当然有罪だと思われていた被告人に対して一人の陪審員が疑問を投げかけるところから始まる息詰まるサスペンスで、日本でも何回も舞台化されています。

日本でも昨年から裁判員制度が始まり、裁判・法廷と云うものが市民にとって否応なく生活の中に入り込んでくるものになりました。今まで不満はありながらも専門家に任せてきた、「人が人を裁く」というそのことの重さについては私たち一人一人が背負っていかなければなりません。「人が人を裁く」と云うことを自分はどう捉えるか、あの人は、この人はどう折り合いをつけているんだろうか、ということです。事実は必ずしも真実とはなりません、むしろ事実を積み重ねることによってどんどん真実から離れて行ってしまうことの方が多いのかもしれません。「事実」というものは観る方向、(無意識の)先入観によって全く正反対の結論に達する場合もあります。

この戯曲は、現在の日本の状況にとってタイムリーであると同時に、人間について、社会について考えさせてくれます。

仙台で活躍中の男優12人が集結します。

第33回 メッシ、元気をありがとう

代表理事 加藤豊子

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走る、跳ぶ、蹴る、ボディバランス抜群のメッシ。飯(めし)ではありません。 スペインの名門FCバルセロナ所属のサッカー選手、リオネル・メッシです。

私が長期にわたるリハビリに向きあえるのは、小柄なメッシの躍動感あふれるプレーと若手育成や怪我人を大切にしたチームの活き活きした映像に触れ〝元気〟をもらっているからです。医療スタッフから「C・ロナウドの方が凄い」と言われても「いや、メッシ」彼の生いたちや高い技術に加え、夢は「世界中のひとが幸せに過ごせることです」と一貫して謙虚に語る姿に魅せられてきました。そしてついに「世界最優秀選手」に選ばれ、ユニセフ親善大使を務めることになったのです。二二歳の若さで。これから始まるW杯南アフリカ大会では、アルゼンチン代表としてさらに輝きを放つでしょう。

また、チームメイトのアビダル選手(フランス代表)の夢も具体的で「いつでも楽しく食卓を囲めること」これらの夢は世界共通ですね。

先ごろ優れた作品を遺し旅立たれた作家の井上ひさしさんは、吉野作造の評伝劇『兄おとうと』の中で、「三度のごはんきちんとたべて 火の用心 元気で生きよう きっとね」は、みんなの願い。叶えるためにはどうすればいい?と問うています。

感動を生む言葉やPLAY(プレイ)は、身体を動かす、大きなエネルギーを秘めています。心からの実感です。生きていて良かった。

第32回 ひよちゃんとじん君

高橋輝雄(理事)

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ひよちゃん(四才)とじんくん(二才)は私の孫である。近くに住んでいる。毎週土曜日には息子夫婦と一緒に夕食を食べに来てくれる。今の日常生活の中での一番の楽しみはこれである。その日の夕方になると「こんばんわー」と大きな元気な声で玄関を入ってくる二人が待ち遠しくて、心なしか体温が一度ぐらい上がった気分になる。

まずは「乾杯!」から始まるのだが、近頃ひよちゃんは妻の見つけた〝子どもビール〟にはまっていて、乾杯時すこぶるご機嫌である。じん君は相変わらずジュースだが、まだ乾杯の意味が分からないのであろう、お姉ちゃんのビールだけは欲しがらない。

「好き嫌いはダメ!」「全部食べなさい!」などと息子に叱られながらも、ようやく食事が済むと、居間のチェストに座って幼稚園で習ったお歌を披露してくれる。じん君負けじとそこに座るがもちろん歌えはしない。この二人の表情、仕草が可愛くて何枚も写真を撮ってしまう。

それがひととおり済むと、タカイタカイとかサカサヅリをせがまれる。それが終わると妻と時に静かに本読みとか、時に「アッチムイテホイ!」「ブルドック ブルドック 負けたら痛いよブルドック!」等々に興じゲラゲラ、キャーキャーと騒ぎあった上、眠気がさしてきて帰っていく。

この間、ひよちゃんのいうことに少し逆らったら「もう遊びに来てやらないから!」と言われてしまった。

ずばり、私の弱点を見透かされてしまった訳だ。参った!

第31回 私、ニューヨークでコカリナ吹いてきます!

阿部加代子(会員)

私が、コカリナと出会ったのは「石巻子ども劇場の高学年組織立ち上げ」がきっかけかもしれません。

 石巻子ども劇場が発足して数年が過ぎ、高学年のための例会(鑑賞会)が求められ県の連絡会に相談したところ、渡されたのが一本のカセットテープ。家に帰って聴いてみると、どれも感動的な歌ばかり。ある曲になると涙が溢れて止まりません。それは『We can stand』

まもなく高学年準備例会「黒坂正文コンサート」が開催されました。

数年後、黒坂さんは「黒坂黒太郎」の名前とともにコカリナの第一人者として、再び私たちの前に現れたのです。

いま私は石巻で三つのコカリナサークルを立ち上げ、おかげさまでコカリナ三昧な日々をすごしています。

今年は「核不拡散条約(NPT)」再検討会議が、五月にニューヨークで開催されます。この会議を核兵器禁止・核廃絶に向けて実効あるものにしようと、世界からたくさんの人が集まります。被爆国日本からも1000人以上の代表団がニューヨークに行きます。私もその中のひとり。

どうせ行くなら、被爆樹で一音でも吹くことが出来たなら・・・「一本貸し出しましょう。」と黒坂事務所からのお返事。

私、ニューヨークでコカリナ吹いてきます!

第30回 へその力

代表理事 加藤豊子

「へそを前に! まっすぐ! 胸張って!」

 「ヨオーイ、ハイ!一・二、イチ、ニイ、しっかり!」

 「へそ、へそ」

 クライマックスシリーズに進出した楽天イーグルスのにわかファンが、応援の練習をしているわけではありません。

『自分の足で歩きたい。大地を踏みしめ、スポーツや芝居を観に行きたい』という私の希いを受けとめ、その目標に向って導いて下さる医療チームの熱いエールが、今日もリハビリ室に響いているのです。

大病から運よく生還し、五カ月を経た今、身体的・心理的にも歩行練習にとりくめるようになりました。しかし、右・左足・両腕どう動かしたらいいのかわからないのです。ドタッドタッ、壊れかけたロボットのように動きがぎこちなく、ホンダのアシモ君がうらやましい。

『どうすればいいの?そうだ、何かになりきろう』

『まずは、類人猿のチンパンジー、次はゴジラ、よ〜し次、人形劇で観た怪獣グリフィンとエルマー』 ・・・ある時は、ソオ—とぬき足・さし足・すり足、狂言者になりきり全神経を集中させます。映画や芝居の登場者を想像し、素敵な歩きをイメージするとリハビリが楽しくなります。

何しろ、へその緒切って生まれて以来、寝がえり・ハイハイ・伝え歩きを経て、『ある日自然に歩いた』と思っていました。歩くのにへそを意識したことはありません。でも、意識するとバランスはいいのです。体の中心にありますからね。胎児の時には、へそを通して母親から育つための栄養をもらっていたのですから。今、再び二足歩行めざしてイメージトレーニングを積んでいます。

負け続けても着実に力をつけてきた楽天イーグルスを見習って、あきらめず一歩一歩。

第29回 いい表情に出逢いたい

本宮 かおり(リトミック講師)

子どもたちは、いつも輝いていてパワー全開。それらは、とても愛らしい。

 人は色々な顔をもっている。友達に見せる顔、家族に見せる顔、愛する人に見せる顔。どれだけの顔、表情をもっているだろうか。レッスンに通う子どもたちも色々な表情を持っているはずで、それを引き出したいと思っている。

感情や気持ち・思いを伝える手段はいくつかあると思うがどうすれば伝わるのだろうか。

事故で全身不随になった方がリハビリで粘土を練る作業をきっかけにパン作りを始めたという。この方のパンを食べると〝気持ちがあたたかくなる〟のだそうだ。一個作るのに三時間かかるので一日に作るのは五個。もう数年先まで予約が入っているらしい。思いを込めて作ったパンを食べた人たちは、そのパンから何かを感じとる。いかに気持ちを込めるか、強く思いを持つかが大切なのだろう。

その時、その瞬間の気持ちを大切にした子どもたちと一緒に感じ、考え、たくさん遊びたいと思っている。

いい表情に出逢えるように——。